高校数学における複素数平面の背景

数学2において複素数というものを習った.

具体的には, 方程式 x^2 + 1= 0の解の一つを iと書き, 複素数 a + bi \ (a, b \in \mathbb{R}) という形で表されているもので, 和, 差, 積, 商, 共役を考えることができるという内容であった.

 

まずは x^2 + 1 = 0の解について考える.

実数 xに対して x^2 \ge 0が成立していることにより x^2 + 1 > 0となってしまい実数解は持たないことが分かる.

そこで, 逆に解を持つような数の世界を考えようとする.

様々な構成法があるが, 一つだけ挙げてみよう.

まず \mathbb{R}は体である.

つまり, 四則演算ができる集合である.

体で,  \mathbb{R}より大きな体を考えたい.

そこで, 多項式 x^2 + 1 \mathbb{R}内に解を持たないので \mathbb{R} x^2 + 1で生成される単項イデアルで割った剰余環 \mathbb{R} / (x^2 + 1)を考える.

これは x^2 + 1 = 0の解まで含めた集合であるからそれを \mathbb{C}と書く, というものである.

いわゆる体の拡大により定義するもので, これはGalois理論と関係がある.

 

次は \mathbb{C}の代数構造に注目してみよう.

 \mathbb{C}には和, 差, 積, 商, 共役, 絶対値が定義され, その絶対値は特別な条件 |z|^2 = |z \overline{z}|を満たす.

これが重要な条件である.

一般化すると, 集合 Aに和, 差, 積, 商, 対合(共役の性質を持つ演算), ノルム(絶対値の性質をもつ, 一種の大きさをはかるもの)が定義されていて, そのノルムは完備(Cauchy列は収束列)で,  \| a^2 \| = \| a^* a \|を満たすもの(さらに劣乗法性も必要), といえる.

これを満たす AをC*環という.

 \mathbb{C}はC*環の一例であるといえる.

 

最後に \mathbb{C}の幾何的構造に注目してみる.

 \mathbb{C}は平面と思えるので,  \mathbb{R}^2と同じであるといえる.

さらに,  \mathbb{C}は実は球面で, 北極点を除いた S \setminus \{ (0, 0, 0) \}と同一視できる.

ここに,  Sは半径1の単位球面である.

そこで, 北極点に相当する無限遠 \inftyを加えた集合 \mathbb{C} \cup \{ \infty \} Sと同一視できる.

これを一点コンパクト化といい, $\mathbb{C} \cup \{ \infty \}$をRiemann面という.

さらに一般化してRiemann面を多様体の一種として定義できる.

なお, 多様体とは各点の近傍で地図が書けるような集合である.